高梁市議会6月定例会 〈審議結果及び私の討論〉
【 主な審議結果 】
議案第87号
「高梁市立小学校及び中学校条例の一部を改正する条例」
賛成10名 反対8名 原案可決
陳情第3号
「備中中学校に係る統廃合の問題は地元合意のないまま進めることなく、白紙に戻すことを求める」
趣旨採択に 賛成12名 反対6名 で趣旨採択されました。
《 私の討論 》
私は今議会に提出された議案の中で、議案第87号の「高梁市立小学校及び中学校条例の一部を改正する条例」について原案に賛成の立場で、それ以外の議案、請願、陳情につきましては委員長報告を了として討論をさせていただきます。
まず、議案第87号「高梁市立小学校及び中学校条例の一部を改正する条例」でございます。これは備中中学校を廃止し平成29年4月に成羽中学校へ統合するというものでございます。これに関しては、地元の住民の方から「備中中学校に係る統廃合の問題は地元合意のないまま進めることなく、白紙に戻すことを求める」という陳情書が1,177筆の署名を集められ提出されています。
この件に関して、今議会の一般質問において、数名の議員から厳しい質問がありました。また、総務委員会においても丁々発止の議論がされましたが、3対3の可否同数となり委員長採決の結果、委員会において否決されました。
この問題の本質を考えるときに、少子・高齢化、縮小する地域における公教育の観点からまちづくりを考える市長、執行部、教育委員会の立場と合併後12年の歳月とともに疲弊する周辺地域のまちづくりとそれに対する不満や旧備中町最後の中学校の廃校が、やがて地域の消滅、アイデンティティーの喪失につながっていくという危機意識がこういった「まちづくりと公教育」に対する態度表明、活動につながっていったという二つの側面から考える必要があると思います。
確かに、広く地元合意や、丁寧な説明がないままに進められてきたことを、これまでの経緯、経過で十分理解しております。また、この地域を取り巻く大変厳しい状況、そして厭世観がどんどん広がっていく中で市長をはじめ教育委員会の関わり方も地元住民に対しての気配り、配慮が大きく欠如していたことも大きな原因だと思っています。これは場外馬券場設置の問題のときも一部の地域住民の合意だけで押し進めようとしたことを見ても明らかです。
縮小していく地域の抱えている社会的矛盾やジレンマを理解し、その罠に陥らないように配慮,注視することが行政の大きな役割であったにもかかわらず、教育的観点という論理が最優先され、本来なら同時に進めなければならなかった地域との信頼の醸成、相互理解、双方向のコミュニケーションの確立が後回しになったことがこのような結果になったことは否定しません。「ひと、まち、自然にやさしいまちづくり」とは真逆、リーダー不在のまちづくりといわれても致し方ない部分もないとは言えないでしょう。
しかし、これからの子供たちの未来、この地域のおかれている現状を考えるとき、この二つの異なった論点の問題を分けて考える必要があります。
憲法26条に掲げられている教育を受ける権利と受けさせる義務において、ひとしく教育を受ける権利とすべての国民はその保護する子女に普通教育を受けさせる義務を負ふ。
また、教育基本法の第4条において、教育の機会均等、すべて国民は、ひとしく、その能力に応じた教育を受ける機会を与えられなければならず、人種、信条、性別、社会的身分、経済的地位又は門地によって、教育上差別されない。 第5条、3項においては、義務教育として、国及び地方公共団体は、義務教育の機会を保障し、その水準を確保するため、適切な役割分担及び相互の協力の下、その実施に責任を負うと明文化されています。どのような環境に生まれようが平等で同質的、均質的な教育を子供たちが受けられるように、私たち大人は不断の努力をしていかなければなりません。
このような市と住民の対立を子供たちはどのようにとらえているでしょうか。大人たちのエゴにいつも振り回されるのは子供たちです。中学生は大人と子供の間のとても多感で繊細で人格形成においてとても重要な時期に当たります。少しでも早くその教育環境、生活環境を整備し、自分たちの可能性や数々の困難、壁に対して立ち向かえられるようにしてあげることが、私たち大人の役目ではないでしょうか。そして、そういった積み重ねがこの高梁の未来、まちの発展につながっていくのではないでしょうか。
新たな地域の創造、縮小社会に対応したがまちづくりが今、問われています。選択と決断を大人や地域の都合で回避したり、先送りしたりすることは、そういった大きな社会的文脈でみれば、まちづくりの後退と言っても過言ではないと思います。
次に、陳情第3号「備中中学校に係る統廃合問題は地元合意のないまま進めることなく、白紙に戻すことを求める」でございます。
白紙に戻すということは先ほど申しましたように、今の教育の現状を鑑みた時に私は決して子供たちにとっていい状況であるとは言い難いと思っています。
しかし、これまでの経緯、経過についてのお話、1177名の署名の大きさを考えると決しておろそかにしてはなりません。地元住民の皆様の気持ちを最大限考慮するために、市長や教育委員会に対してこの問題や合併後の地域づくり、一体感の醸成にもっと真摯に、真剣に対処するように趣旨採択に賛成とさせていただきます。
最後に、議案第84号「高梁市備中高梁館条例」について一言申し上げます。これは東京杉並区西荻にある建物で、本市出身の弓道家の遺族から寄贈されたもので、その個人の遺徳を顕彰し、その伝統文化を継承するとともに、本市の情報発信施設として活用するため、設置するというものであります。
平成23年から高梁の野菜を売ったりする食彩屋と銘打ったイベントを開催したり、高梁の情報の発信基地として活用したり、古くなった母屋を倒して再整備がされるということで、その予算付けもされています。その運用ついては、以前の一般質問において、東京新橋にある県のアンテナショップと連携して、もっと積極的に利活用するべきではないかといってきました。
しかし、実際に現地に行ってみると、その実態は市の説明とはずいぶんと違ったものに感じられました。ここでは詳しくは申しあげませんが、市の公共施設としての役割をなしていない現状をこれからどのように活用していくのか。そして、市の公共施設としての、その意義とこのような施設を公共が維持していくことの意味を考えていただきたい。
そのことを、現在、この施設を管理されている団体の方としっかりと協議されることを申し添えて私の討論とさせていただきます。
≪追記≫
人口減少、少子・高齢化、経済縮小という厳しい状況にある高梁市。3月議会での新図書館を核とした複合施設の指定管理(ツタヤ図書館)等の問題、6月議会での備中中学校の統廃合の問題など市の抱える「社会的矛盾とジレンマ」(地域格差、教育格差)が大きくクローズアップされました。
しかし、その矛盾やジレンマに対して、その解決の方向性は未だに見いだされないままです。若者の政治離れが叫ばれて久しいのですが、若者の政治的無関心の有無はわかりませんが無関係ではないことは確かです。
高梁市の10年、20年先の未来を見据えたまちづくり。今ほど重要な時期はないのではないでしょうか。